『注射痕が痛いから肩にパンチして痛みを散らしてくれ。』
妻ちゃんに衝撃的な一言を言われた織田です。
ソファで寛いでると、突然妻ちゃんが
「ねぇ。肩にパンチしてくれない?」
と私に言ってきた。私は突然の事で
ふぁ?!
となっていると
「いや、ワクチン注射の箇所がまだ痛むから、その付近を殴って痛みを散らして欲しいの」
と更なる衝撃発言。
私「理屈が百戦錬磨の兵士なんですけど。」
妻「傷口を焼いて塞ぐ的な感覚ね。」
私「いや経験ある感じの言い方!!」
妻「いいから早く。」
弾けろ!!俺のザバギャングゥゥクナッコゥゥゥ!!
と言う事で人生で初めて妻の肩をオラオラオラァと殴りました。妻ちゃんは
よきよき
と私のザバギャングゥゥクナッコゥゥゥのダメージは無く、どこぞの殿下みたいに満足してました。私のダイヤモンドは砕けました。
ある時は私が頭部を負傷した時は傷口を見て凄く心配してくれてたのに、少ししたら当然私に頭突きをかました。
痛み悶える私に正気を取り戻した妻から出た言葉は
「ごめん、突然好きが溢れて頭突きしたくなった。怪我してたの忘れてた!」
ありがとう!でも今かね?!愛を初めて覚えたラオウかね?!
妻にはいつも驚かされる。なので、おかげで毎日が楽しい。これは一人では成しえない楽しさだ。私にとって誰かといる事がこんなに楽しく幸せに感じるのだと妻ちゃんと付き合って同棲・結婚して知った。
料理も一人で作って食べるより、誰かの為に作って一緒にお話しながら食べると美味しい。
料理を作って振る舞う楽しさは一番の調味料ってグッチ雄三も言っていた気がする。
当然、妻ちゃんも作ってくれるがたまに気が狂う時がある。
この前、私が仕事から帰ってきたら妻ちゃんが「お帰り」よりも先に
「私の中のダイゴが暴れ出したの・・・」
と私に言ってきた。あまりの発言に
「え?え?!何?!」
と返すと
「あ、いや千鳥の大悟。美味いもんと美味いもんを合わせれば美味いもんが出来るんじゃ!って私の大悟が言ってきて気が付いたらおかず二品を混ぜて一品にしてた。ごめんなさい。」
えっと、皆の中に千鳥の大悟さんっているもんなん?
流石に言って意味が分からなかったが、出来上がった物はかなり美味しかった。
妻ちゃんは
「ホントはもう一品あったのになー。」
と暴れた大悟に後悔をしていた。
少し話が逸れた。
とにもかくにも、誰かが待ってる家、誰かの帰りを待つ家があるという事がこんなに日常の糧に自分がなるとは思っていなかった。
実は私、妻ちゃんと出会う前、少し気持ち的に疲れる日が多々あった。
それは俳優としてもだし、何より日常に疲れていた。
細かく見れば変わっているし成長もしていたのかもしれない。しかし、かつてないくらいの何か分からない壁にぶち当たっている
気がしてるが明日が来るからまた頑張る
みたいな日々が多かった。自分の中で、漠然と
「あぁ。多分3年後もあんまり変わらない日々を送ってるんだろうな・・・。」
という気がしていた。
少しずつ演劇が仕事にはなっていたが何の為に誰の為にやってるのか、頑張ってるのか見失って、「いやいや自分の為だ」とまた奮起する日々。そして「自分の好きな事を好き勝手にやってるんだ。一人の方が都合が良いよな・・・」と敢えて思い込むようにもしていたような気がする。
そんな中、自分の中でポッキリ折れてしまった出来事があった。
休みの日の夕方。出かけた帰りに、なんとなくいつもと帰り道を変えた。そして公園を見つけた。
子供たちが楽しそうに遊んでいる。それを優しい目で見守る親たち。
公園のベンチに座って、その日常を眺めていた。
すると一人の男の子が目の前でこけた。
私は「大丈夫?」と声を掛けると、その子はニカっと笑い「大丈夫だよ!!」っと私に言った。
父親が慌てて駆け寄ってき「大丈夫か?!」とその子に言うと、またニカっと笑い
「パパ!僕泣かなかったよ!!凄いでしょ!」
と言った。父親は目に涙をためて
「そうかそうか・・・。強くなったなぁ。」
と頭を撫でてその場を去った。
街中に夕暮れを告げるチャイムがなる。公園から皆が消えていく。
「バイバーイ」「またねー」
気が付いたら一人になったので帰り道を再び歩く。
あちらこちらの家に灯りが灯って「ただいま」「おかえり」の声が聞こえる。
家に着いた。何となくだが私も
「ただいま」
と言ってみた。
当然「おかえり」の返りも帰りを待っている人もない。
玄関で私は何故か泣き崩れてしまった。
という事があった。その時から自分の中で「あぁ。ちょっと駄目かもな・・・。」少しポキッと折れたのが分かった。
そこからは漠然とした不安の中で過ごしていた。自分では結構ギリギリだったと思う。別に鬱になるとかそんな感じとは違うが、バイトや演劇の仕事から帰ってきても以前より疲労感や虚無感は多くなっていった。
そんな中で、妻ちゃんと出会った。東京に来てから誰かとずっと一緒にいるというのは初めてだった。
「お帰りなさい」のなかった部屋にお帰りなさいがやってきた。
「ただいま」をいう今が毎日あった。
漠然とした一人の不安は、この人の為にというやる気に変わった。
私の「自分の為に」の限界を突破したと思う。
知り合ってから結婚するまでが短かったのは、凄くおこがましく言うと
「この人の為なら頑張れる」
と思ったからだ。別に好き同士でも結婚をする必要はないと思う。だけど、そこには色んな責任が伴わないとも考える。
子供の事や生活、老後。様々な責任が結婚をすると圧し掛かってくる。
私はこの責任が恐らく欲しかったんだ。
この責任は世間一般でよく聞く「結婚は人生の墓場」になるのだろう。だけど、私は「結婚は人生の成長」になった。
東京に来た時の思い描いていた自分とは大きくかけ離れてる。
でも私は今の自分が最高に幸せである。
じゃないとこんなコラム書かないしね。
もうすぐ妻が帰ってくる。ご飯を作って待っていよう。
お帰りなさい
と迎えよう。
明日の
いってきます
をいうのが待ち遠しい。
ではまた。